丸日記

丸海てらむの日記です

「進撃の巨人」完結後考察

丸海てらむです。進撃の巨人を読んだ。

 

完結しました。34巻を買った。

既にマガポケで最終話まで読んでいたので大筋は知っているんだけど、単行本版には何ページか加筆があってそれがけっこうでかい話っぽかったので、それについて書こうと思う。

 

連載版と単行本とで共通の部分に関しては既に以下の記事を書いたのでそちらを参照のこと。

maruumi-teram.hatenablog.com

 

そして当然のごとく最終話までのネタバレを含むので、未読の方はさらばだ。

あと外伝「LOST GIRLS」のネタバレもちょっと含む。何年も前に刊行されたものだからあれだけど、これから読みたい人は注意を。

 

 

 

 ミカサとユミル

「あなただったのね…… ずっと私の頭の中を覗いていたのは……」

見開き2ページが追加されている。また、直前のページの最後のコマが、ユミルに対峙する絵に挿し変わっている。

 

ユミルの回想シーンのような絵で、フリッツ王が槍に貫かれており、その傍らでユミルが子供三人を抱いて泣いている絵がある。

これは以前描かれた話と違っている。ほんとはユミルがここでフリッツ王を庇い、ユミルは死に、王が三人の子にユミルの身体を食わせるというシーンがあった。

 

仮説というか閃いたんだけど、こうではないか。始祖ユミルは「過去未来を問わず、自分や自分の子孫に干渉することができる」「王に槍を投げられる場面で、自分が王を庇わなかったことに改変して、それによって巨人の力を今の時代からも消し去った」ということなのではないか。

エレンが直前のシーンで「始祖の力がもたらす影響には過去も未来もない……同時に存在する」って言ってて、それならあり得るかなと思った。

 

また、ミカサの選択した通りになる、っていうのもこのシーンからどうにか説明がつく気がする。始祖ユミルはずっとミカサの考えていることや感じていることを知っていて、ミカサが受け入れられないような未来になるたびに、エルディア人の行動を改変して運命を変えてきたのではないか。

外伝「LOST GIRLS」でこんな話がある。第二巻、「エレンが食われた」とアルミンから聞いたミカサは混乱を紛らわせるように戦い続けガス欠で落下、二体の巨人に囲まれて死を覚悟するシーン。外伝ではこのときミカサが回想のように思い出していた記憶が語られていた。

 

以下詳細。

回想シーンは数年前、あの盗賊がミカサの両親を襲った夜から始まる。「お待ちしていました イェーガー先生」、ところがこの回想シーンではほんとにグリシャとエレンが来ている。両親は襲われずに生きていて、そのままミカサ母の診療があったり、エレンとミカサが喋ったりする。そのまま何日も日常が描かれる。エレンとミカサが森の奥へ散歩に行くと、例の盗賊三人が野犬に食われて死んでいるのを見る。エレンはいつもグリシャの診療についてきてミカサと会っていたが、ある日から怪我をして来なくなった。ミカサが「どうしてもエレンに会いたい」と願うと、ミカサ母の症状が悪化して、一家はグリシャの家の近くに住むことになり、結果としてまたエレンに会えるようになった。その後、エレンは「アルミンと一緒に飛行機を作って壁の外に出る」と言い出す。決行の日の夜、ミカサは「エレンがどんなに嫌がっても行かせるべきじゃなかった」と後悔する。『……もういいだろう そろそろ帰る時間だ……』とモノローグがあり、雨が降り出す。ミカサの前にずぶ濡れのアルミンが走ってきて、語りだす。「僕のせいだ」「飛行機は飛ばなかった」「エレンは制御できなくなった飛行機から僕を掴んで投げた」「でも…… エレンはそのまま壁に……」「僕は……何もできなかった……」「すまない……ミカサ」ここで頭痛がして、ミカサは回想シーンから帰ってくる。巨人二体に囲まれながら、ガス欠の装備で空を見上げる。ミカサのモノローグ、『死んでしまったら もう あなたのことを思い出すことさえできない』『だから 何としてでも生きる!!!』最後にエレン巨人体が目の前の巨人を殴るのを呆然と眺めながら、『――もしあと一つだけ 願いが叶うなら…… もう一度 エレンに会わせてください』

と、これで外伝終わりである。

 

実際読むとかなり意味深で困る。

 

これはスピンオフとか二次創作ではなくて「本編世界で実際に起きたことだが語られていなかったこと」らしい。進撃世界の世界線、この時間軸で、実際にミカサはこの回想を見ていたらしい。この「現実とは違った過去の記憶」を。

 

それから、この最終巻でも、ミカサがエレンと二人で逃げて小屋で生活しているシーンがある。これも「実際とは運命が違う未来」みたいなもんである。それをミカサは実際に見ている。このあり得なかった世界線での、エレンからの「このマフラーは捨ててくれ」「俺のことは忘れてくれ」に対して、「ごめん できない」と返事をしている。

 

おそらく、これらは「実際にあった」出来事なのだ。そしてミカサがそれを受け入れられないのを見て、ユミルがそのたび過去を改変して運命を変えてきたのだ。そう考えると辻褄が合う。ミカサだけがなぜかその記憶を保持しているというか、何かのきっかけで断片的に、夢のように思い出す。

 

つまりだな、この世の運命はミカサに都合のいいように、ミカサが受け入れられるような未来になるように常にユミルに改変されてきたけど、それはユミルが勝手にやってることであって、ミカサはそうとは知らなかった。それで説明がつきそうだ。でも第1話のシーンと第138話のシーンがなぜ繋がっているのかは微妙に説明がつかない。なんでエレンは泣いてたんだ。みんな「伏線回収すごい……!」って言ってるけど、実際どう回収されたのか、何故どのように繋がっているのか、まだ俺あんまわかってないぞ。

 

 

謎はまだ残っているけど、まあこの加筆でちょっとはわかった。

 

 

百年後、大きな木

最後、鳥が飛んできてミカサにマフラーを巻いてくれるシーン。もう始祖ユミルはいないからこれはユミルの力じゃなくてほんとに偶然ミカサの願いが叶った(?)ということになる。いい話だったなー、と、連載版のときはここで終わりだったのだ。

単行本では続きがちょっとだけある。

三人家族、夫と妻と小さな子供が、エレンの墓参りに来る。後ろ姿だけなので誰かはわからない。ジャンとミカサか? まさか。その後家族は八人になり、墓参りの先頭には杖をついたおばあさんがいる。次のコマでは年老いた手が墓にバラを手向けていて、その次のコマではマフラーを巻いたおばあさんが花の中で横たわっている。木は巨大に成長していて、背景では立ち並ぶ高層ビルを戦闘機が爆撃している。ビルは崩壊し破片が散乱し、そこに苔が生え、一人の少年と犬が木を訪れる。奴隷ユミルが落ちたときと同じように、木の根元には大きな穴が開いていた。 進撃の巨人 ―完―

なんだそれは。いきなり百年くらい時間が飛んだぞ。ミカサおばあちゃんになってなかったか。ていうか結婚してなかったか。いいのか?

あとなんか現代になってたぞ。ビルとか立ってた。急に立つもんだろうか。現実世界では産業革命が起こったあたりからだいたい100年で一部に高層ビル群が出来始めてたらしいので、まあありえるらしい。人類の進歩はめざましい。そして戦争が起きてたぞ。まじでか。平和になって終わりでしたではないんだ。

 

進撃のスクールカースト

そして最後。スクールカースト世界のエレンアルミンミカサが、この進撃の巨人の物語を映画館で見た、という設定。擁護派のミカサと考察サイト派のアルミンが喧嘩するが、エレンは「お前らと映画見れて楽しかったよ」とまとめる。

ねえ。ねえ。アルミンが「まだ謎は残されているし」「もっといい意味で期待を裏切るような結末を見せてくれると思うじゃん」と怒っている。これはねえ、正直僕もそう思っている。あんだけハチャメチャやってた進撃がさあ。第一巻で主人公が食われたり、超展開ばっかであれよあれよという間に価値観世界観がぐるぐる変わってきた進撃が、最後けっこう普通に伏線回収して、登場人物もだいたいみんな救われる、というのは進撃にしては優しい終わり方だ。最終話読み終えるまで、ほんとにみんな巨人になったまま終わるんだろうと思ってた。

このスクールカースト実はけっこう大事な気がしてて、諌山先生からの「考察サイトも含めて読者の意見に目を通してます」「言いたいことはわかります、謎も多いでしょう」という意図が伝わってくる。謎があるのは作品の不備とか書き忘れとかではなくて、意図してそうなっているのだ。謎が残ってるものとして出されているのだから、そっかーと受け取らざるを得ない。ヨロイブラウンの瓶とか。諌山先生の中ではちゃんと理由とか筋道だった成り行きがあるんだろうか。知りてえなあ。

 

で最後、けっこう衝撃の事実が明かされる。「史実を元にした」「100年前巨人がいたなんて信じられない」と言っている。実はスクールカーストは本編と同じ世界線の話で、百年後の未来の世界の話だったのだ。まじかあ。伏線回収だ。いや回収したから何だってんだというとこではあるけど。

あとミカサの「登場人物たちとお別れできてよかった」ってのが一番本心かもしれない。実は自分も。たぶん大半の読者にとっても、そしてエレンにとっても。もしかしたら本編をもっと残酷で突き放すような描き方にもできたかもしれないけれど、読者の人たちと向き合う中で、最後はちゃんと全員救わなければ、っていう気持ちになったんじゃないかと想像したりする。みんな報われたよ。ライナーもアルミンも、エレンも、みんな。

一応、最後の戦争のシーンが「これで何もかも平和になったわけじゃない」っていうことを示唆しているけど、もうこの時代では進撃本編の登場人物たちはみんな亡くなってそうだから、大して心を痛めない。エレンたちの話はあくまでこの時代だけの話で、その先のことはまた別の人たちの話なんだよ、という。

 

 

 

 

 

さあ疲れた。感無量だ。

二か月前にもう読んだはずなのに、改めて、終わったんだなあという感じだ。

 

11年も描いてたんだ。大変だ。一巻とか今見返すとまた感想違ってくるんだろうか。

 

キャラクター名鑑FINALってやつに諌山先生へのインタビューが載っているらしい。それ読みたさに買うかもしれない。定価800円くらい。悩もう。

 

それではさらばだ。いい物語だった。

諌山先生、今までお疲れ様でした。そしてありがとうございました。