丸日記

丸海てらむの日記です

進撃の巨人考察 頭進撃になってからのエレンの心中と決断

丸海てらむです。進撃アニメ見返しててまたわからんことがあったので整理のために書く。原作も最新話まで追ってるのにこのアニメ底が深すぎて描写が緻密すぎて理解するのが難しい。

 

エレンについて。マーレ編が始まってからどうもマーレ人のほうに感情移入させたり島内でのいろんないざこざが描かれてたりで話がややこしい。そしてエレンの心中が不明である。第一巻からマーレ編直前あたりまではエレンが主人公で彼目線で物語が描かれていたのに、マーレ編から急に謎の人物である。エレンが何を考えているのか、読者もわからないしミカサやアルミンや兵団にもわからない。謎の人物になってしまった。で僕は最新話まで読んだので答え合わせのようにわかるようになっているはずである。それを思い起こして書く。

 

すなわち最新話までのネタバレを含むのでご注意を。単行本未収録の、最終巻に収録されるはずの内容までネタバレを含むと思います。

 

 

時系列順に書く。ざっと最初から。

 

まず生まれはウォールマリオの町。医者の父グリシャと口うるさい母カルラとの間に生まれる。父からも母からもどうやら愛されて生まれ育ったらしい。

幼いころいじめられっ子の少年アルミンと出会って、壁の外の世界の話を聞いてわくわくした。

幼馴染のミカサの家に父と共に行ったら両親が殺されておりミカサも行方不明、父が憲兵を呼びに行っている間に勝手に一人で犯人の小屋に突撃、刃物を用いて犯人の二人を殺害しミカサを解放。直後三人目の犯人が現れ殺されそうになるが、ミカサに「戦え」と諭してミカサが倒してくれる。帰る場所のないミカサはイェーガー家に引き取られることになり、エレンはマフラーを巻いてやった。

成長するごとに外の世界に行きたいと思うようになり、母にそのことを話すと危ないからやめろと怒られるが、父はなぜか明後日の方向を向いたまま「帰ったら秘密にしていた地下室を見せてやろう」と鍵をちらつかせて仕事に出かける。

その日超大型巨人が現れ壁が破壊される。無数の巨人が壁内に侵入し、母は目の前で食い殺される。エレンは助かったが、この日「敵をこの世から一匹残らず駆逐する」と決意する。

その晩、父グリシャは怖い顔をしてエレンに注射を打つ。その後父は行方不明になっている。

ここから四年かけて訓練兵として巨人殺しの技術を学び兵団に入ろうとする。

(このあたりまではかなりわかりやすい、まだ普通の少年漫画である 故郷を巨人に奪われてしまった、必ず巨人を殺してやるぞ! という まあ動機が復讐なのがけっこう後ろ向きではあるが そういえばエレンから「巨人をぶっ殺したい」とはよく聞くが、ウォールマリアを奪還したいとか人類を反映させたいみたいなことはあんまり聞かなかったな)

もうすぐ卒業というところでまた超大型巨人が出現。巨人との戦闘中にエレンは食われてしまうが、どうやら自分は巨人になっていたらしく辺りの巨人をなぎ倒す。目が覚めると戦いは終わっており兵団に危険人物として拘束され、調査兵団で見張られることになる。

(このあたりはけっこうまだ楽しいところである 巨人の力を使ってどう戦っていくか、俺はこの力を使いこなせるか、どうすればいいんだ、みたいな)

壁画委調査中、女型の巨人に襲われエレンは拘束されそうになるが、逆に女型の捕獲に成功。正体が訓練兵同期のアニだと知り驚く。

同様に壁を破壊した超大型巨人と鎧の巨人についても同期のライナーとベルトルトだと判明。戦闘の後、なぜかエレンは巨人を操ってライナーたちを襲わせることができ、窮地を脱した。

憲兵団たちに攫われる。同期のクリスタとその父がいて、話を聞いたりクリスタに触れられて過去の継承者の記憶が開いたりして、いろんなことを知ってしまう。巨人を操る力が代々王家で継承されてきたこと、父グリシャがそれを奪うために子供たちを殺したこと、この力は王家の人間が持っていないと使えないこと、今自分の中にその力があり、クリスタの父はそれを王家に取り戻そうとしていること。エレンは絶望して、もう俺の命はいらないから、力を返す、俺を食ってくれ、とまで思うが、クリスタは「王家の人間は代々巨人を駆逐しなかったし今後もそうするだろう」という話を聞いて、父に従うことを拒否しエレンを逃がす。クリスタの父は逆上して巨人化するが、エレンはその場にあった「ヨロイブラウン」と書かれた瓶を飲むことで鎧の巨人の硬質化能力を得て、その場を脱した。

(たぶんここでかなり混乱している いろんなことを知ってしまった この世界はどうなっているのか、なぜ王家の人間は巨人を駆逐してくれないのか? なぜ父はこの力を奪って自分に託したのか? ライナーやベルトルトは何者なんだ? とにかく硬質化能力があれば壁を塞げる、ウォールマリアを奪還できる!)

そしてウォールマリア奪還作戦へ。団長が死んだり兵団がめっちゃ死んだり、敵のリーダーの巨人が自分の兄を名乗って「お前を救い出してやるからな」とか意味不明なことを言っていたりするが、結局作戦に成功してウォールマリアの穴を塞げたしエレンも生きて帰ってこれた。かつて破壊された実家の地下室にやっと来ることができ、父の残した手記を発見。そこには恐るべき真実が。書ききれないが、壁の外には人類がいる、壁内人類は迫害される人種である、父は「進撃の巨人」を継承して壁内人類を救うためにやってきた、などなど。

 

さてこのへんで問題の場面である。手記を読んでエレンは大変困惑する。「壁の外にあったのは自由なのか?」「俺にはヒストリアを犠牲にする覚悟がない」とか。ほんとにどうしよう状態である。これから壁外のやつらとどう戦っていけばいいんだ、俺はどうすればいいんだ……と思っているところで、式典でヒストリアと接触し、未来の記憶が開く。

原作では断片的にしか描かれていないが、ここでエレンが見た内容はきっとこうだ。青い海、壁の向こうの人々の、壁内人類への憎悪の渦。未来の自分がグリシャを諭して女子供を食い殺すように仕向ける場面、未来の自分が幾数万の超大型巨人を従えて地表を踏み鳴らす景色。なんだこれは? 自分が、人類を滅ぼしている? エレンはこれが嘘でもなくて実際に存在する記憶だと肌で知っている。それであんな恐ろしい顔になった。原作を初めて読んだときは「そんな顔をしなくても……何か過剰な演出なのでは」と思ったが、今思い返すとそりゃああんな顔にもなる。

 

そして壁外へ、海へ。「何もかも、親父の記憶で見たものと同じなんだ」「なあ……俺たち、海の向こうの奴ら全員殺せば、自由になれるのか?」アルミンとミカサはこれを聞いているとき、意味合いとしては「それくらいやらないと自由になれないが、まさかできるはずもない、この困難な状況でこれからどうすればいいんだ?」というような例え話だと思って聞いているが、エレンは違う。もう実際に、海の向こうの奴らを全員殺す未来を見ているのだ。それをやって本当に自由になれるのか? というような意味も込めて言っている。

 

エレンはまさか、この記憶で見たことを誰かに言うわけにもいかない。話が大きすぎる。これからどうすればいい? どうすればいい……。よくわからないうちに時間は過ぎていく。とにかく壁外から攻めてくる奴らがいて、それを迎撃する。船のひとつが寝返って、義勇兵として仲間になった。それでマーレの文明を取り入れて島が発展していくのを見る。鉄道が走り、美味い飯が食えて、などなど。海外からアズマビトとかいう連中が来て、島を救ってくれるかもという話をしている。そんな中イェレナから急に「安楽死計画」の話を持ち掛けられる。元はジークが思いついたらしい。ジークとエレンで協力して始祖の力を使い、エルディア人から生殖能力を奪って安楽死させてあげようという協力。そのためにイェレナたちは島を渡って今我々に協力しているらしい。それを知っているのはイェレナとエレンとジークだけである。エレンはこう思う、こんな馬鹿げた話受け入れられるわけがない。エレンは大事な仲間たちを守りたいんだ。あいつらを犠牲にするなんて考えられない。だが断ったらジークもイェレナも何をするかわからない、あまりに大きな規模の計画だ。一端話に乗ったふりをすることにする。と同時にフロックに話を持ち掛けて、自分の単独行動を助けをしてくれるよう頼んだ。このあたりから、エレンの味方はあんまりいない。マーレ国も、イェレナもジークも明らかに敵である。安楽死計画なんて。兵団はそれを知らない。知ったら協力関係は壊れて、マーレと島とですぐに戦争が起きるはずだ。イェレナたちが味方になってくれるかは大きい。エレンはほんとは島を救いたいんだが、イェレナやジークの力が大きすぎるので一旦そっちについているふりをする。そしてギリギリの最後のところで裏切って、安楽死計画ではなくて地ならしを発動する。それが作戦だったんだろう。

 

それ以外に道があっただろうか。そもそも地ならしで壁外を踏みつぶす以外に島を守る術があっただろうか。作中ではなかったと描かれている。エレンもどうもギリギリまで待ったようで、エレンがひとり壁内を脱出しマーレへ潜入しているときも、まだ迷っている様子がある。話し合いをしたがだめだったという描写はあったし、戦争をしても勝てなさそうな感じはある。巨人の力が二体あったって、世界中が協力すればたぶん墜とせるんだろう。スラバ要塞戦で鎧の巨人が砕かれたことでそれは立証された。もう時間がない。タイバー家率いるマーレ国は、マーレ国と収容区内のエルディア人を救うために、パラディ島を世界の敵に仕立て上げた。そして、歴史を語った。かつて巨人大戦で退いたはずのエルディア帝国の王、地ならしをちらつかせながら特に侵略は行わないまま島に籠っている帝国。その正体は不戦の契りで戦いを放棄した王と、そこから力を奪ったエレン・イェーガーにより、今まさに再度世界に危機が訪れている! という話をしたのだ。もしかしたらグリシャが始祖の力を奪わなければ壁内の「脅威」はなくなって、戦争は起きなかったかもしれない。どうせ地ならしが起きないんなら放っておいてもよかろう、ということになるかもしれない。かもしれないだ。力がないなら今のうちに略奪しようということになるかもしれない。それはわからない。とにかくグリシャとクルーガーはエルディア人を救うために力を奪った。世界から去った脅威が再びエルディア人の手に収まったのだ。それを世界が知って、戦争が起きざるを得なくなった。

 

ここでエレン目線での最善策を考えてみる。エレンが例のヒストリアとの接触で未来の記憶を見て、どうしようかと考えるのを自分でも考えてみようという話。

 

ざっくり四つの勢力がある。壁内人類、マーレ国、ジーク、エレン。

壁内人類はとにかく和平を目指していた。話し合いの機会はないか、僕らに侵攻の意思はないことを伝えられないかと模索していた。その芽は潰えて、では次に地ならしをやるのか、やるとしてどのような方法でか、ヒストリアを巨人にするのかどうしようかとかを考えていた。和平の道は本当にないのか? あんまり詳しい未来を見れないだろうのでエレンも詳細はわからない。また、ヒストリアを巨人にしたり子を産ませたりということは到底受け入れられない。そして地ならしの力なしで戦争が起きたらすぐに負けるのは目に見えている。

マーレ国と世界の国々は、とにかく世界を滅ぼしかねないパラディ島を先に潰す気でいる。ヴィリー・タイバーの演説の効果である。エレンはきっと未来を見てそうなることを知っている。世界がいずれ攻めてくることを知っている。

ジークの目論見は安楽死計画である。エルディア人みんなでただ子供を作らないだけで安らかに世界から脅威が去る、それでいいじゃないか。エレンはこれも受け入れられない。大事な仲間たちから未来を奪うなんてことがあってはならない。

そしてエレン。未来の自分が地ならしを発動させて世界を滅ぼすところを見てしまった。きっとそうなるのだろう。本当に? けれど時間が進めば進むほど、だんだんそうなるとしか思えなくなっていく。ジークは本当に安楽死計画を進めていて、イェレナはそのためにたくさんの仲間を騙して島内に協力している。これに逆らえばどうなるかわからない。外の国々との和平交渉もどうやら全然だめみたいである。壁内人類はヒストリアを犠牲にして地ならしの力を実験しようとか言っている。それもだめだ。ヒストリアを巨人にしない、同期のみんなを助ける。それがエレンの望みである。どうすればいい? 放っておけば戦争が起きて島は壊滅する。安楽死計画に乗ればとりあえず死にはしないが未来はない。どうすればいい? やはり未来の記憶で見たように「地ならし」で世界を滅ぼすしかないのか?

本当にそれしかなかったのかどうかはわからないが、エレンはだんだんその決断を深めていった。自分の手で今全部に決着をつけたい、みたいな気持ちもあったんだろうと思う。

 

やがてエレンは「安楽死計画」のために単独でマーレに潜入し先制攻撃を仕掛ける。これはジークが提案したことで、エレンはそれに乗っただけである。戦いに乗じてジークは島に来ることに成功した。ただ帰ってくれば早々リヴァイに蹴られ、サシャは死に、ジャンになじられ、ハンジに怒られ、「教えてくださいよハンジさん! 他にどんな方法があったって言うんですか!」どんな方法があったんだ。わからない。逆らっていれば既に島に未来はなかった。

島に帰って、地ならしをやるかどうかと壁内がうだうだしていたら、マーレのほうから攻めてきた。そして混戦の中、ジークとエレンは接触し「道」にたどり着く。

ジークは当然安楽死計画が発動するものだと思っていたが、エレンはこれを拒否して「地ならし」を発動。世界を滅ぼし始める。そして島のみんなでこれを止めようとする最終章を今やっているというわけである。

 

自分とその友人たちを救うだけのために、罪のない人も含めて世界を滅ぼすのは、ちょっとやりすぎなんじゃないか? 「だいいち島の『外』と『中』とじゃ数が違いすぎる」とはエレンも自分で言っている。「でもそんな未来 受けれられない」そうなのだ。

 

思えば進撃の巨人はずっとこういう話だった。

 

「不戦の契り」の話もそうである。この世界、自分さえいなければ、自分が犠牲になることを選べば全て平和にうまくいくのだ、だから自分はいらないんだ、という意思があって、そこから立ち上がる物語である。世界は残酷なのだ。例え誰かを犠牲にしても、自分たちは生きていく。「戦え」! そういう話である。「民を守らぬ王はもはや王ではない」。名言が多すぎるまじで。

「誰かに自由を奪われるくらいなら 俺はそいつから自由を奪う」。例え敵が誰だろうと、何人いようと、世界が敵であろうとも。

島か世界か、どっちを取るかとなったときに、主観的に自分が大事なほうを取る。これは自己肯定の物語だと僕は勝手に解釈している。生きる意志、他人より自分を優先するという意思の物語。進撃がウケているのは表面的なホラーとかアクションだけじゃなくこういう本質が時代に合っているからではないか、と思っている。少なくとも自分が好きな理由はこれである。ヒストリアが父親をぶん投げてエレンを助けるシーンが一番好きだった。

 

 

さて長くなったのでこんなところで。ちゃんと検証できたか怪しいが、やはりエレンの身になってみると地ならしで世界を滅ぼすに至るのもギリギリわからんでもないかなあと思う。そして兵団に黙っていたのは安楽死計画に協力していたからだった。

 

長々読んでもらってお疲れさまだ。

あと二話。続きが楽しみだ。